ホンダ4000億損切り&BYD「RACCO」上陸:2026年夏、EV一辺倒からの脱却が加速

EV一辺倒からの転換:2026年夏の世界自動車業界

2026年7月、世界の自動車業界は「EVシフト一辺倒」から「マルチパスウェイ(多様化戦略)」へと大きく方向転換している。米国市場のBEV(純電気自動車)シェアは2025年末に6.6%まで低下し、かつての11%超から急落。ハイブリッド車(HV)が急速に存在感を取り戻す一方、BYDをはじめとする中国メーカーは世界規模での攻勢を強めている。

ホンダ:4143億円の損切りとハイブリッド回帰

最も鮮明な方向転換を示したのがホンダだ。2026年3月期決算でEV戦略の見直しに伴う4143億円の営業赤字を計上。三部社長は「複数シナリオがなかった」と反省を示し、2027〜2030年にかけて次世代「e:HEV」搭載モデルを13車種投入する計画に軸足を移した。次世代e:HEVは燃費10%以上向上・コスト30%以上削減を目標とする。一方で2026年からグローバルで「Honda 0(ゼロ)シリーズ」の展開も開始し、HVとEVを並走させる両面戦略を採る。

トヨタ・日産:全方位戦略と固体電池開発

トヨタは従来からの「全方位戦略」を堅持し、地域ニーズに応じたHEV・PHEV・BEVを組み合わせて提供する。2026年3月投入のRAV4 PHVはハイブリッドの商品力を高め、bZ4X ツーリングはEV SUVラインを拡充する。日産は2026年内に4車種のEVを投入し、2028年度を目標に全固体電池の実用化を進めるなど技術優位性の確保を急ぐ。

欧米メーカー:HV回帰とBYDとの協業

フォードは2030年までにグローバル販売の50%をHV・PHEV・EVで構成する目標を掲げ、BYDからハイブリッド用電池を調達する交渉を進めている。GMはEVトラックの生産拡大を2026年半ば以降に延期しPHEVを再導入。7月8日付のリポートでは、VW・BMW・現代・ステランティスなど主要OEMが800Vアーキテクチャと汎用EVプラットフォームへの移行を一斉に加速していることも明らかになった。

BYD:世界首位の牙城と日本市場攻略

逆境をもろともしないのがBYDだ。2025年に純電気車を226万台販売し世界首位の座を確立。テスラの164万台(前年比9%減)を大きく上回った。日本市場でも2026年7月に軽EVの新モデル「RACCO」の投入を目指し、後半にはATTO 2、年末にはSEAL 6を予定するなど攻勢を強める。ただし日本での2026年上半期販売は前年比16%減となっており、普及には課題も残る。

まとめ:分岐点に立つEVシフト

2026年夏は、EV市場の「現実主義」が定着した転換点として記憶されるかもしれない。ハイブリッドの収益性を活かしながら次世代EVへの投資を継続する欧米日メーカーと、純EVで世界市場を席巻する中国勢。この二極構造が今後の競争地図を塗り替えていく。

参考情報

中国EV輸出が倍増・欧州3台に1台が電動化:IEA2026報告が示す世界EV勢力図の転換

IEA「世界EV展望2026」が示す三極構造

国際エネルギー機関(IEA)が発表した「グローバルEV展望2026」によると、2025年の世界EV販売台数は前年比20%増の2,000万台超に達し、新車販売全体の4台に1台がEVとなった。2026年には2,300万台(全体の28%)への成長が見込まれるが、その伸びは地域によって大きく異なる三極構造が鮮明になっている。また、EV用バッテリー展開量は2025年に1.2TWh(前年比+30%)に達し、2020年比で7倍超に拡大した。

中国:製造の75%を掌握し、輸出攻勢と日本上陸

最も存在感を増すのが中国だ。2025年の中国EV生産台数は1,600万台と世界全体の約75%を占め、国内需要を20%上回る過剰供給状態に。その余剰分が輸出に流れ、2025年の中国製EV輸出台数は前年比2倍の250万台超と過去最高を更新した。国内ではEVがすでに新車販売の約55%を占め、2026年には60%への到達が見込まれている。

この勢いを背景に、BYDは2026年後半に日本専用設計の軽EV「ラッコ」を正式投入すると発表した。スーパートールワゴン型・スライドドアを採用した日本市場向けモデルで、日産「サクラ」(約260万円〜)を競合として価格競争力のある価格帯を設定する見込み。5月30日からは東京・愛知・福岡など全国6都市での展示イベントも開始されており、日本の軽EV市場への直接侵攻が始まった。

欧州:規制主導で3台に1台がEVへ加速

欧州はEU CO2規制の厳格化により、主要市場で最高の伸びを記録した。2025年の欧州EV販売は前年比30%超増加し、新車販売の28%に到達。2026年にはさらに約20%増が見込まれ、欧州では3台に1台が電気自動車になると予測される。規制主導の成長は補助金依存と異なり持続性が高く、メーカーにとって対応は不可避だ。

米国:EV税控除廃止で失速、ハイブリッドへ揺り戻し

一方、米国ではEV税控除(インフレ抑制法)の終了が直撃し、EV比率は約10%と横ばいにとどまった。フォードをはじめ業界全体では650億ドル超の損失・評価損が積み上がり、フォード単独でも約195億ドルの計上を余儀なくされた。代わりにハイブリッド需要への回帰が鮮明で、フォードは2030年までにハイブリッド・EV合計50%超を目指す方針に転換している。

日本メーカー:マルチパスウェイで中国勢と対峙

トヨタは航続距離700km超の次世代SUV「bZ4X ツーリング」を2026年春に投入し、全方位型戦略を深化。ホンダは新EVシリーズ「Honda 0」のグローバル展開を開始し、2040年のEV・FCV比率100%に向けて布石を打つ。日産はリーフに低価格グレード「B5」を追加。しかし国内EV比率は依然約2.8%と低水準で、BYDの軽EV参入は国内メーカーに新たな競争圧力をかけている。

まとめ

2026年のEV市場は「中国の製造覇権と輸出攻勢」「欧州の規制主導型加速」「米国の失速とハイブリッド回帰」という三極構造が固まりつつある。日本メーカーはコスト競争力と商品力の両立という難題に正面から向き合う局面を迎えた。

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